教育実習という授業改善の形② 同じ発問で行う4名の先生の授業研究

教育実習3週間目

1回目の保健は、教育実習生が授業する保健の授業に合わせて、教育実習生が作ったスライドを活用して他のクラスをもつ3人の先生を含む4人で授業をし、お互いに見学にいき、研究協議を行うという授業研究をしてきた。

 

この方法は、教材に頼らず、与えられたスライドでいかにわかりやすく説明をするかと言ったとても腕を問われるチャレンジで、とても勉強になったし、終わった後に振り返りをしやすいと言ったメリットもあったが、他の先生のオリジナリティーを殺してしまった感じもしてしまった。

 

なので今回は、教材も含めてある程度共通のテーマを設けながら、それぞれが教材から授業を作るということをするために、核となる発問を共通にし、授業全体がワンウェイにならないようにワークをいれることを条件としてそれぞれの先生に授業をしてもらった後、研究協議をするという流れにチャレンジすることになった。

 

核となる発問は以下の3つである

教科 保健 家族計画と人工妊娠中絶

 

家族計画について

Q1 もしあなたが結婚して、家族を持つことになったら、

あなたが何歳の時に、何人、何歳差で子どもが欲しいですか?

またその理由はなんですか?

 

避妊法について

Q2 避妊法のうち一つ選択し、その避妊法について

なぜ避妊できるのか、どのように使用するのか、使用するときの

メリット・デメリットはなんですか?

 

人工妊娠中絶について

Q3 中絶が認められている「特別な理由」とは何か

なぜその理由があれば中絶が認められるのか?

また、中絶すると心身にどんな健康影響が出るのか?

 

この授業研究を経てわかったこと(あくまで実感)が3つある。

 

差が出たのは

1、その授業で身につけさせたい能力が明確であること

2、学ぶ動機を作ること

3、内容をストーリーにすること

 

順を追って説明すると

 

1、身につけさせたい能力が明確であること

これは、いわゆる「本時の目標」ではない。教科の目標ではなく能力の目標。

想像すればわかるが、これだけの発問を50分で行えば4人とも似たり寄ったりの授業になる。しかし、差が出たのはそこにどんなことを求めたか。自己開示や傾聴姿勢、アウトプット前提のインプットなど「能力」を鍛えることを求めると自然とワークの質が上がった。ちなみに「能力を鍛えているのぞましい姿」について具体例を言った場合も僅かながらワークの質が上がった。

 

2、学ぶ動機を作ること

やる内容は決まっているが、それを生徒がさほど重要と思っていないギャップがある

これをちゃんと埋められるかがポイントで、このとき理屈が通っていることよりも、感情が動くことが大事で、映画の予告編のような先をチラ見せしながら見たい知りたい!と思うような言葉がけがポイントで、これはやはり教育実習生には難しく、経験年数が長い先生ほどうまくできていた(ちなみに経験年数が4名の中一番長いのは私である笑)

 

3、内容をストーリーにする

これは学ぶ内容にはそれぞれキーワードが存在して(教科書の太字みたいな)

それには関連性があるが、そのキーワードをバラバラに説明するのはウィキペディアにもできるが、それをちゃんと関連づけてそのワードが出てくる必然性を生み出す、

いわば、単語と単語の橋渡しをするようなスキルが大事である。

この発問3つにもそれぞれ関連があるが、常勤である私ともう一人の先生はそれをちゃんと理解できたが、非常勤の先生と実習生には理解するのが難しく、バラバラに取り扱っていた感じがしたと振り返っていた。

 

この辺のスキルに差が出てくることがわかった。

つまるところ、教科内容の理解以外に授業において伸ばすべき能力を明確にし、学ぶ必然性を解くことでモチベートし、学ぶべきキーワードに橋渡しをして1つのストーリーにする力が教員の能力の差として色濃く出る形になりました(これはなんの研究でもないデタラメです)

 

もう一つ、この発問3つを授業内で取り扱うととても時間がかかりますが、あえて50分完結で授業をすることを求めました。そのため「優先順位」を意識してタイムマネジメントをしなければなりません。そこも面白くて、教育実習生と非常勤の先生は終わらなくて後半を駆け込むように終わりました(後半は結構大事)

しかし、もう一人の常勤の先生はこのペースだと終わらないと判断し、授業内で予定していた中盤を削り、後半をちゃんと説明して終わりました。

 

これは体育でも起こったのですが、熟練者は中盤を削れますが、慣れてないと中盤をカットして終わりをちゃんとやれるようにコントロールできるようになるみたいです。

※実習生は最後まで終わらなくて終わりのメニューをカットしてました

 

最後に

 

実習生はこうした取り組みの中着々と力をつけたことは間違い無いですが、それ以上に一番力をつけたのは私自身で、特にこの授業研究での授業は人生でトップを争うほどの授業になりました。

 

これは自慢したいのではなく、どこまで行っても「与える側が一番与えられる」ということです。つまり、教育実習は教員の見習いを育てる期間ではなく、教員の見習いを指導するという経験によって自分自身が初心を思い出し、授業スキルを抽象化し、転用可能にしたり、改めて見直す機会になる教員研修であると思いました。

 

教育実習という機会を与えてもらったことに感謝です。

 

が、あまりにも負担が大きい(土日は疲れてこれでもかってくらい寝てました)

やっぱり制度の見直しは考えるべきです。しかしそんなこといっても仕方ないので

頑張ってよりプラスになるために捉え切ったつもりです。参考になれば・・・

 

 

教育実習という授業改善の形① 同じ教材を活用した4人の先生による授業研究

私は初の教育実習の指導教諭をしているが、

何も知らない、これから学校の先生を目指す希望に溢れた学生が

くることはとても学校にとって刺激になると考えている。

 

が、スキルや経験、知識の圧倒的に少ない学生が

授業を見てケチつけられて、「現場は厳しいんだよ」と教えるだけの

実習にはしたくない。

 

しかし、だからと言って「楽しい」だけの力のつかない実習にもしたくない

 

じゃあどうしよう?と考えたときに

「先生も併走して、先生方も学ぶ機会にしてしまおう」

と考えました。

 

ということで、「2年生を担当している全先生で教育実習生の作った授業をやる」

というチャレンジをすることにしました。

 

つまるところ、自分で作った自信作ではなく、

ぶっちゃけイマイチなスライドで授業するというなんとも

実力が問われる挑戦を行いました。

※実習生のKさんごめんなさい

 

題材にした内容は「妊娠・出産と健康」

担当したのは私、同級生で3年目のK教諭、非常勤講師3年目のS教諭、教育実習生のKさんの4名で7クラス行いました。

 

担当クラスは以下の通りです

月曜日→2組 実習生Kさん

火曜日→7組 実習生Kさん 5組 白根 1組 K教諭

木曜日→4組・6組 非常勤S教諭

金曜日→3組 実習生Kさん

 

というKさんは白紙の状態からはじめ、最後はみなさんが自分が作ったスライドでやった授業をみていいとこ取りをして、最後に授業をできるなんと理想な授業計画(偶然)

 

この授業をお互いにほとんど全て見学にいき、

週の最終日に研究協議を行うというちょっと本格的な内容になった。

 

 

同じ教材を活用しても授業に差が出る!

当たり前といえば当たり前だが、同じスライドを活用してもそこにかける時間配分や説明の仕方などはそれぞれ色が出ていてすごく興味深かった。

私はどちらかというと、ちゃんと妊娠の仕組みを知ることも大事だが、概要だけわかっていて、とにかく「命が生まれるのは奇跡に近いことである」ことや「妊娠の仕組みを知らないとやばい」と言った感情的な部分を大切にしたが、仕組みを丁寧に説明する先生もいれば、妊娠に備えた健康管理について(妊娠に気がつかない間に胎児の健康にとって望ましくない行動を取らないことなど)重点をおいて取り上げた先生もいた。

 

またそれぞれ発問の仕方や授業スタイルなど、指導内容は同じでも、指導方法に差が出たのもすごく参考になった。

 

共通言語で振り返りができた!

よくあるのが、授業の相談になると「私はこんなことやった」の応酬で、内容が深まって行かないことが多いが、同じ教材(スライド)を使うと、「ここどうやって説明した?」とか、「あのスライドの後に教科書のここを説明したよ」みたいな、説明の仕方やワークの取り入れ方と言ったちょっと制限がかかった中での議論が起こり、より深い振り返りができた。

また、実習生が作った教材(スライド)に対して、外から物をいうだけでなく、「実際にやってみてこんなスライドがあったらいいなと思った」と言った、経験によるフィードバックができたのはよかったと思う。

 

実習生の授業の変化

1回目の授業と3回目の授業は見違える変化だった。

自分がやった2回の授業と他の3名の授業をみて、いいところを取り入れた授業になっていた。実習生はそれをオリジナリティーのない授業と評したが、結局のところオリジナリティーとは、真似を複合したものに過ぎない。そう言った意味では、自分と同じ授業を他の先生の形で、他の先生の知識も踏まえた形で見ることによって、自分の授業を3回体験し、4回改善したイメージを持って1週間を終えたことはすごく力になったはず。

 

 

非常勤講師S教諭のチャレンジ

非常勤講師S教諭は、1年目はワードも使えないぐらいアナログで、今までプロジェクターでスライドを投影して授業をしたことがないが、今回は巻き込まれて初めてプロジェクターを教室で活用して授業を行った。

本人は「機会がなかったらチャレンジできなかった。スライドを使うと内容が頭に入ってないとてんぱりますね・・・」と言ったフィードバックをしてくれた。

同時に自分がまだまだだって久しぶりに感じられて、また頑張ろうと言ってくれた。

 

感じる力不足。教材や機材、生徒との関係性に救われて見えなかった本当の実力。

私自身も、これ結構自信があったんですが、やっぱり自分の作ったものでないと勝手がわからない上に、引き出しの中で対応できると思いましたが、やってみるとまだまだ勉強不足・・・説明の順番や発問の仕方、ワークの取り入れ方などうまくできずに、生徒にはてなマークが浮かんだまま授業が終わってしまいました・・・

 

話し方や聞き方、授業の展開の仕方など引き付けられる力がないかよくわかりました。これは本当にショックでしたが、同時に面白かったです。

 

研究協議でメイキングまで共有

授業だけでなく、その授業がどうやってできたか。みたいなところまで共有しました。

どこが大事だったか、どんなワークを入れたか、そのワークを入れた理由は何か。

そう言ったことを久々に真面目にやってとてもためになりました。

私は非常勤のS教諭がグチャグチャに書き込んだ台本的なプリントをみて、自分はそう言った準備を最近怠っているなと反省しました。

 

みなさんやってみて、みなさんが普段どんな授業をしているかなんて

忙しさにかまけて全然知りませんでしたので改めて知って、次の授業に対する改善案を既に考えていた自分がいました。笑

 

 

実習生の力不足をフィードバックする会ではなく

どうしたらより良い授業になるかを考えて学生も教員もともに学ぶことができた

すごくいい機会になりました。

協力してくれたみなさんに感謝!

(おそらくこう言ったことができる職場は多くないはず・・)

 

 

次回にむけて

 次回は、私が考えた3つの問い

 

家族計画について

Q1 もしあなたが結婚して、家族を持つことになったら、

あなたが何歳の時に、何人、何歳差で子どもが欲しいですか?

またその理由はなんですか?

 

避妊法について

Q2 避妊法のうち一つ選択し、その避妊法について

なぜ避妊できるのか、どのように使用するのか、使用するときの

メリット・デメリットはなんですか?

 

 

人工妊娠中絶について

Q3 中絶が認められている「特別な理由」とは何か

なぜその理由があれば中絶が認められるのか?

また、中絶すると心身にどんな健康影響が出るのか?

 

これらを取り入れた授業をそれぞれ作ってきましょう!

という同じ問いから授業を作ってもらうという授業をみなさんで

行っていきたいと思います。

 

この報告についてはまた来週以降に!

 

それではまた!

聞くことにフォーカスした対話的な授業

今日、保健の「結婚生活と健康」という項目で

”聞くことにフォーカスした対話的な授業”

にチャレンジしてみた。

 

単純に手順を説明すると、隣の人と2人一組になって

 

1 チェックイン

自分の今の気持ち(疲れている・授業だるい・先生の服装が真っ黒で喪服みたいなど・・・)を共有する。

 

2 二人組のペアワーク

あるテーマ(例えば「あなたにとって結婚とは何か?」という問い)に対して、二人組のうち一人が1分程度、相手に質問をし、相手が思っていることを引き出し、整理する。

わからないことについては追質問してより具体的に理解する

 

3 話し合いの内容の共有

AさんとBさんでペアワークを行っていた場合、Bさんを指名したら、Bさんが「Aさんにとって結婚とは何か?」について答える。つまり、自分のことではなく聞いた相手のことを答える

 

4 そのことに関する知識や教員の意見をレクチャーする

 

以下2・3・4をテーマを変えて繰り返す。

 

 

ここに至る背景は、3つ

 

① アクティブラーニングの書籍などを数多く執筆しているKさんとのお話で、「対話の始まりは自己開示である」という話を聞いたこと

② とあるコミュニティーでの議論でアクティブラーニングって話すことを求めるけど「聴くこと」にどれだけフォーカスされてるのかな?と問われたこと

③ 我が校に教育実習生がきて、指導教諭としてちょっと近代的な授業を見せたかったこと(見栄ですね)

 

ということから

チェックインという、今の自分の気持ちを共有する自己開示から入り、

話すことではなく、聴くことを求めるペアワークを取り入れた

さらに聴くときに共有(アウトプット)前提にしたことで

質問をする動機付けをすることでより話を具体的にしようと考えた

 

単元がやりやすい内容だったのはあるがこれは結果として大成功だった

(しかも授業準備は完全レクチャー形式より格段に少なくすんだ)

 

実感として改善された点は

・「話せ」と言ってないのにめちゃくちゃ話していた

・雑談(大人数の中で耳につく声)がほどんどなかった

・内容がかなり個性的なものになり一般的な回答(作ったような回答)がなかった

・講義形式でやっていた時も反応があり、一方的に話している感覚が少なかった

・繰り返せば繰り返すほど内容が深まり、質問や傾聴のスキルが上がって行った

 

などがあげられる

 

これらを成し遂げた要因を抽象化すると

・自己開示(チェックイン)をすることで、相手と話す際の最初のハードルがかなり下がった気がした。その後の活動にスムーズに入れたのではないかと感じた。

・「話せ」というと話して終わりだが、「質問する」ということは、「聴く」ことを伴い、必然的に「会話・対話」になる。さらに、聞いてもらえると話したくなる傾向にあるのではないかと思った。

・共有(アウトプット)しなければならないということで、ちゃんと理解しなければいけないと思って聴いたのではないかと思った。

・当てられた時も、自分のこと言うのは恥ずかしいが、人のことならちょっと面白がれるのではないかと思った。

・Aさんを当てると話を聞かれたBさんも緊張感をもつし、Aさんと親しい人もBさんに親しい人も耳を傾けるので自然と、話を聞く人が増えたのではないかと思った。

 

今までこう言った意見交換で、我が校の生徒たちが

一般的な回答に留まらず、ちゃんと自分の考えを明らかにできた

ワークはあまりなかったので結構衝撃を受けた。

 

かつ、あまり授業の準備に負担がかからず、かなり応用が効いて

一斉授業からの移行もそんなにハードルが高くない形式であると感じた。

 

生徒の感想を一部抜粋すると

 

Gさん

結婚は自分本位で考えるのではなく、互いの信頼関係がないと成り立たないということが改めてわかりました。 今回の活動も込みで、話し合うことは何においても大切なことだと思ったので念頭においておきたいと思います。

Hくん

隣の人と話して結婚に関しての価値観が真逆に近いぐらい違くてこんなにも意見が分かれることがあるんだなと思いました。新婚ホヤホヤの先生の話も聞きその場その場の状況タイミングなどでやることなどとても変化し、人生を決める大切なことだととても思いました

 

と言った感想をいただきました。

大事にしていた内容のみならず、「話したこと」についての感想も

多くあってすごく価値を感じました。

 

 

私自身が、いろんな組織運営に携わる中でもそうですが、

やっぱり「対話」をするには

「自己開示」と「聴くこと」はすごく大事だと感じました。